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花咲く夜に
第3章 興味
『ああ、
ヨモギだろ』


『へぇぇ〜〜〜。
美味しいんですか?』

ビニールハウスにて薬を散布する。

リュックサックのような入れ物を背負い、
出ている管から粉が落ちる仕組みになっている。

かなり重い。


『美味いよ♪
ちょっと草くさいけどね。何アンタの地域はヨモギ餅も無いの?』


『私の実家も、
住んでたアパートも比較的街だったから。
農家もなかったなぁ。
だからすごく新鮮で毎日嬉しい』


『実家は、
サラリーマン家庭か』

『うん。
父さんは信用金庫勤めで母さんは兼業パート。
弟……さっきの拓海は大学を出たあとに地元誌のデザイナーをしてるの』


『ふぅん』
道理でスカした男な訳だ。貴斗は拓海からの敵意剥き出しの目と、
整った風貌(背が高く二重まぶたではっきりした目鼻立ちの良い男だった)を思い出した。


『……ちゃんと居るじゃんか、
必要としてるヤツが』


『うん?』


『アンタ桜の木の下で喚いてただろー。
「世界で一番愛してる人に捨てられた〜死んでやる〜」って。
弟さんやお母さん…お父さんも、
ああやって飛んで来るくらいアンタを愛してるんじゃないの?
男女の愛だけが愛でもないだろ』

『…………』

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