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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第7章 おなにぃ中毒
春の視線を感じた。
第六感は当時の俺をその矛先に振り向かせるのに充分な活力だった。

「みぅ……」

軒下に、猫。
さらに奥には、まだ猫とも言い難い形容の産まれたてが、数匹零れ落ちていた。
その幾つかは、この世に辿り着きながら息絶えていたと見える。
母猫は、じっと動かず俺を品評していた。
やがて見定めたあと、スゥッと、何処かに音も無く消えた。
残された白い毛むくじゃらが一つ、濡れて、震えていた。

俺がこの後にどうしたか、大概の人間は想像に難くないだろう。

みゆりは、これに似ている。

両親の許しを得られなかった俺は、ひた隠しにその白と毎日を過ごし合った。
懐いてくれる彼女が可愛かった。

けれど、それはいつの日かあっけなく幕をとじる。

俺の胸に帰って来なくなった彼女は一体、何処に行ったのか。
方々探して見つけた先は、隣家の玄関だった。

「おかえり、ゆきちゃん。何処に行ってたの?」

いつの間に、彼女は囲われていたのか。
俺のことなんて忘れてしまったように、彼女は俺を振り返ることなく隣人の足に絡み付いた。

固く鍵の掛かったドアが音を立てて、俺の心に深く爪跡を残した。

そして数年後、俺は度々このような虚無に出逢うことになる。
裏切りとは。
まさにそれは今の俺を形成する要素の一つだ。
結局。
要するに。
彼女もそういうことなのだ。
いつか俺を呆気なく忘れてしまう日が来るのだろう。
そして、本来俺は彼女に好かれるはずもない。
この外見もその一つ。
否定なんてしやしない。
俺は彼女を傷付けた。
罪を、犯した。
彼女がその事実を知ったら。
思い出したら。
俺はまた、拒絶されるのだろう。
醜い化物は、愛されるはずもないのだから……。
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