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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第10章 裏切り
卵が先か。
鶏が先か。
考えたらキリがないことの例えにそんな話を聞いたことがある。
思い返せば私達夫婦は結い納める前からそんな関係だったかもしれない。
肉体関係という制約を背負う前から私達男女は複雑な相関図で成り立っていたのだから、これは、多分必然でもあるのだ。

その日、夫が死んだ魚のような目をした。

気色の悪い顔をした人間に、ゴキブリでも見るような表情を浮かべられた。
あの目。
怒り狂う訳でもなく、哀しみにくれる訳でもなく、気が触れる訳でもなく。
静かにこの家を去って行った。
もう私の元に帰っては来ないだろう。
ベッドで違う男に跨がっていたのを見られたのだから当たり前だ。
そしてそれでもいいとさえ思っていた私も、私だ。
久しぶりの快楽に抗えなくなっていた。
深みに填まっていた。
泥沼に首元まで浸かっていた。
理想の愛で惜しみなく貫いてくれる若い男に、私は骨抜きにされてしまった。
今更戻れるはずはない。
いいえ。
あの人を元から愛したこともないのだから、戻るというのもまた違う。
でも。
どうせ。
夫もまた行く宛てがあるのだから何も構う必要など無いのだ。
ただ一つ気掛かりなのは。
これから先、息子をどうするか、ということだけだ。
まだまだ純粋無垢な我が子に何ら罪はない。
先に引き金を引いた私に恐らく、愛だの絆だの口に出来る権利はないだろう。
二四也。
ああ、可愛いつよちゃん。
あなたに逢えなくなることだけが、ただ一つの私の後悔よ。
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