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第1章 別れと始まり

「佐々木？…どうした？」

私に気付いた滝本さんが入口を塞いで立つ私のところへ戻ってきた。

「あっ！お連れ様？そういえば、女性を連れてくるの初めてだよな！」

店員さんも私に駆け寄ってきた。
って、あれ？女性…初めてなの？
予想は外れていたようだ。

「あぁ、会社の後輩。」

「そうなの？初めまして。俺はここのオーナーの田崎です。」

店員さんじゃなかった。
オーナーさんだ！

「あっ、初めまして。佐々木です、よろしくお願いします。」

「あはは、ゆっくりしてってね。」

田崎さんはニッコリ笑うとバックヤードに入って行ってしまった。
アゴひげが似合うワイルドなイケメンだったな。
年齢は30歳くらい？

「佐々木？こっち。」

滝本さんに呼ばれて我に返った。
イスに促されて席に着いた。

「何飲む？」

滝本さんは、アルコールのドリンクメニューを渡そうか、ソフトドリンクのメニューを渡そうか、迷っていた。
体調が良くなったとはいえ、さすがに今日も飲むのはマズイだろうと思い、ソフトドリンクのメニューを受け取った。

「これ以上顔がヤバくなると困るので、今日はやめておきます。」

「……だから、それは悪かったって。」

「あ、いえ、嫌味ではなく…まだ月曜なので。」

「あぁ、そうか。……俺は飲んでもいい？」

「えっ、はい。どうぞ。」

なんでわざわざ聞かれたんだろう？
バルに来て二人とも飲まないのは気まずいでしょう。