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素直になれなくて
第9章 愛の行方
「浅井、ちょっと良いか?」
高山部長に呼ばれて、浅井は会議室へ行く。
「部長、何ですか?」
「ほれ。」
A4サイズの冊子を渡される。
浅井は、嫌な予感しかしなかった。
「……部長、俺、見合いは2度としませんよ?」
「そう言うなよ。見るだけ見ろよ。」
浅井は、冊子を開いて、直ぐに閉じた。
「お断りします。」
「お前な……もう少し真面目に見てくれよ。今回は綺麗な子じゃないか。」
浅井は、冊子をテーブルに置くと、頭を下げた。
「失礼します。」
「おい、浅井。もう3年だぞ?」
「……まだ、3年です。」
「何時まで探すつもりだ?」
「ジジイになって、死ぬまでです。」
真面目な顔で、そう言い放った浅井に、部長は呆れて笑い出した。
「どんだけ、好きなんだよ。」
「……仕方ないでしょ。彼奴の事しか考えられないんだから。」
浅井は、悠里が居なくなってから、ずっと行方を探していた。
部長が、小さなメモを渡してきた。
「?」
浅井はメモに書かれた名前に見覚えがあった。
「飯島家具の社長ですか?」
「ああ、今は隠居してそこに居るそうだ。」
荒川区の住所が綴られている。
「あの、部長?」
「この前、会社に山城を尋ねて来たんだ。」
「ここに?」
「ああ、行方不明になってるのも知らなかったそうだ。」
「……何で来たんですか?」
「自宅の近くの公園で、山城を見かけたらしい。」
「え?」
浅井の顔色が変わった。
「そこで、どうしても本人には声を掛けられなかったそうだ。で、ここに来たんだ。葬儀の時に受け取って貰えなかった金を渡して欲しいと。今なら必要だと思うからって。」
浅井は、部長を黙ったまま見つめた。
「後は、お前が自分の目で確かめろ。俺は社長の話を聞いて、山城がどうしてお前の前から姿を消したのか、納得出来た。」
「……理由って……」
部長は、浅井の肩をポンと叩いた。
「俺は、山城のお前に対する精一杯の愛だと感じたよ。お前は……愛されてるよ。」

「浅井?部長何の様だったの?」
会議室から出て来た浅井に恵美は声を掛けた。
「……悠里が見つかった。」
「え?」
「とりあえず、行ってくる。」
「え?今から?」
「ああ、部長には許可貰ったから。」
そう言うと、浅井は鞄を持って飛び出していった。
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