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素直になれなくて
第11章 エピローグー田坂の想いー
「……斗……海斗……」
「……あ……」
悠里が心配そうに浅井を覗き込んでいる。
土曜日、浅井は浩斗と公園で遊んで帰って来て、そのままソファーで昼寝をしていた。
腹の上には、浩斗がスヤスヤ眠っている。
「泣いてたよ……悲しい夢でも見たの?」
浅井は、ゆっくり身体を起こして、腹の上で寝ている浩斗を抱きしめる。
「悲しくないよ……嬉し泣き…かな………なんか夢見てた。」
悠里は、浅井の横に腰をかけると、肩にもたれかかった。
「いい夢?」
「ん。いい夢だった。」
「そっか。なら良かった。」
悠里は、嬉しそうに浅井を見つめた。
浅井は、悠里を優しく抱き寄せた。

「……なぁ、明日……田坂の墓参り行こうか?」
「……命日じゃないよ?」
「ん。そうだけど。」
悠里は、優しく微笑んだ。
「ヒロくんの夢だったんだね?」
浅井は、バレたかと呟き、頭を掻いた。
「じゃ、ヒロくんのロールケーキ、買って行こうか?」
「おお、いいね。そうするか。」
浅井は、悠里の頭を優しく撫でた。
まだ寝ている浩斗を、浅井は優しい眼差しで見つめた。

夢なのか、現実なのか……

浩斗は、たまに大人の様な顔をする。
悠里が無理してる時。
悠里が寂しい時。
悠里が疲れてる時。
悠里が困っている時。
浩斗は、男前な態度をとる。
そんな時、俺は慌てるんだ。こいつに負けちゃダメだって。
浩斗、お前が田坂でも、田坂じゃなくても……

お前は、俺の永遠のライバルなんだ。

「負けないからな。」
そう呟く浅井を、目をパチクリさせながら、悠里は見つめた。
「何に負けないの?」
「ん。こっちの話。」
キョトンとする悠里を、浅井はクスクス笑いながら見つめている。
「悠里……大好きだよ。」
「……海斗ってば……誤魔化したでしょ?」
「誤魔化してないよ。」
ふくれっ面をしながら、ソッポを向いた悠里の頬にキスをした。
「悠里……こっち向いて?」
悠里は、ゆっくり振り返る。
浅井は、悠里の顎に手を当て、ゆっくりと唇を重ねた。
「悠里……愛してる。」
浅井は、優しく微笑んだ。

「……ん……ママ?」
浅井の膝の上にいた浩斗が目を覚ました。
「お、俺のライバルめ、目を覚ましたな?」
「ん?」
不思議そうな顔をする浩斗を、浅井はクスクスと笑いながら、優しく抱きしめる。
浩斗は、浅井をジッと見つめて、クスッと笑った。


ー終わりー
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