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飼育✻販売のお仕事
第1章 逆説的冤罪





 深更、哺乳類達の収容所に、紺色の制服に身を固めた公務員らが押しかけた。

 女に言い渡された罪状は、大きく分けて三つあった。

 新涼たなびく夜闇に紛れて、男達に連れられてゆくたおやめが、少女の悲痛な悲鳴を浴びる。


「…──さんっ!!…──さん!!」

「お嬢様、なりません、お嬢様っ……」


 少女が壊れた人形のように、女の名前を繰り返す。執事の制止を振り切って、警官達の波をかき分けた。


 困憊しきった女の目が、一縷の光の残滓に歪む。


 一瞬の破綻だった。十四年という歳月かけて、女にだけ知らされなかった裏切りと、この少女を飼育したがる人間達の陥穽だった。

 そして、結果招かれた事態は、この世では正常と呼ばれる。



「──……」

 女は少女の名前を呼んだ。生来の颯然たる調子を備えたソプラノは、世界の果てでの温度を含んでいるようでもあった。

 安らぎが女をくるんでいた。かつての恋敵の監視下で、恋人と信じて疑わなかった人に貫かれた名残が女を満たしていたのか、それとも少女か。


 女の手首に被さる布が、無邪気な手のひらの力にたゆんだ。

 たった一枚の繊維の壁が、女に少女の存在感を伝える。


 女は、十四年もの前に雇い主でもあった男に振り向く。


 旦那様。

 いかにもかしずくように呼んでいた時分でさえ、頭を下げた試しはなかった。


 その男こそ、少女の──……





─2016年長月、某日─
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