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他人の妻、親友の夫
第8章 視欲の目醒め
レストランはいつも行くようなファミリーレストランではなく、小綺麗な街の路面に構えるイタリアの国旗を掲げた店だった。
気後れする暇もなく母に引かれて店内に入ると、店員が席へと案内してくれる。

「おお、春恵(はるえ)、遅かったな」

席には既に先客の男が待ち構えていた。聡明な秋彦は言われる前から分かっていた光景がそこにあった。
唯一想定と違ったのは、その男の風貌である。

「ごめんね。この子が息子の秋彦。ほらご挨拶は?」

冬だというのに浅黒く焼けた顔。
武骨そうな体つきとゴツゴツした指。
どこのブランドのものかだけが際立った服装。
記憶の中に残る父とは似ても似つかない、下品で低俗な男だった。

そのショックは大きく、挨拶など出来る心のゆとりはなかった。
一言も発せられずに立ち竦んでいるところに、その男の険しい睨みを浴びせられる。

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