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他人の妻、親友の夫
第8章 視欲の目醒め
この日を境に、秋彦の暮らした穏やかな世界は終焉を迎えた。
一度顔合わせすればもはや承認されたものと思ったのか、男は頻繁に二人の住むアパートに訪れ、母は嬉しそうにそれを迎えていた。

そもそも小学六年生の息子の承認など必要ないと、母も男も考えていたのかもしれない。
愛する母親に裏切られた気分になり、秋彦は次第に塞ぎこみ気味になっていった。

男はそのうち合鍵をもらい、誰よりも先に家にいる日さえあった。
学校から帰りドアを開け、男の安っぽい香水の匂いが鼻をつくと憂鬱な気分にさせられる。

「おう、帰ったのか?」

リビングにごろんと横たわる男になにも言わず部屋に入ると背中から「気色の悪い餓鬼だ」という言葉を浴びせられた。

母と二人で生きてきた大切な場所を汚され、それでもなにも言えない。自分がいかに卑小で弱い立場なのかを思い知らされた。

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