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他人の妻、親友の夫
第8章 視欲の目醒め
この異常な生活はある日突然終わりを告げた。
中学三年生になった春のある日、あの男が突然家から出ていった。
理由は聞かされていない。
恐らく他に女が出来たのだろう。

「さ、夕飯にしようか……」

母は何も語らず、あの男がやって来る前と同じように暮らそうとしていた。
しかしそれは虫のよすぎる話だ。
秋彦に何の了承も得ず男と暮らし始め、居なくなればまた元通り。
まだ成熟していない秋彦には受け入れられない話だった。

それ以前に彼も母にとても話せないことをしてしまっている。

一度壊れたものは、もとに戻らない。

秋彦は全寮制の高校に通い、奨学金で大学まで出た。
母親とはそれっきり顔を会わしていない。

自分を捨てた父と同じ職業につき、父と同じように母を捨てた。

彼の中には視る悦びだけが残ってしまった。

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