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他人の妻、親友の夫
第11章 享楽の果て
「俺はお前に甘えてばかりだった……」

海晴の口から溢れだした言葉は予想していた全ての展開と違うもので、パニックになった志步は何も言えずに棒立ちになった。

「ダンサーなんて、なれるわけないのにいつまでもしがみついて……お前にだけ苦労させて……」
「そんなことないよっ」

何について否定したのか、自分でも分かっていなかった。ただ卑下して、自暴自棄になりそうな夫を否定したかった。

「いや……事実だ。子供が欲しいだなんて言っても、俺には見せる背中もない」
「海晴は頑張ってるよ」

彼女の言葉に海晴は困ったように薄く目を閉じて首を傾げる。


「父親になるって、子供を作るだけじゃない。家族を守る、そのために働く……働いて養う……それが父親の役目だろう?」

意外なほどに冷静な彼の姿に、思い付きで自己否定している訳じゃないんだと知らされた。
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