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他人の妻、親友の夫
第4章 未達の悦び
そう言いつつも懸命でひたむきな彼女の態度に微笑みが溢れる。

「悪いが私は今日はこれで失礼する」

ゼミ室全体に語りかけて視線を送る。

「落雷で停電することも有りうるからその時は手順通りに装置を止めるように」

学生達に改めて注意を促すと素直な返事が返ってきた。
学力が低下しても、それはまだ救いようがある。
素直ささえあれば。

満足げに頷くと秋彦は急ぎ足で車に向かう。
既にポツリと落ちてきた雨粒は、構内を出て長い下り坂を降りる頃には本格的に降り始めていた。

「危なかったな……」

ワイパーの動きを速めてから呟く。
理依は雷が嫌いだ。
怯える前に早く帰ってやりたい。

その想いから、信号が青に変わるとやや強めにアクセルを踏んでいた。

彼の自宅は山の中腹にある大学からほぼ一直線に降りた住宅街にある。
急いで車を止めると共に雷が鳴った。
傘を広げる暇も惜しんで玄関を開けた。

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