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口琴
第13章 お義父様との縄遊び
佐山家の玄関先の路肩に、ハザードランプの点滅が見えた。

黒塗りの車。この車を見るだけで蕾は不整脈を起こす。膝がガクガクと震え、足が地面にへばりついているみたいに一歩が出ない。

口の中はカラカラだった。呼吸の仕方を忘れたかのように息ができない。大きく肩を使って呼吸のタイミングを探るが、かえって過呼吸になり、喉の奥からヒューヒューと奇妙な音がする。

「はぁはぁ…はぁはぁ…っっ!」

その直後、グルグルと曇天が回転したかと思うと、一瞬で視界が闇に包まれ、体がフワリと宙を舞った。

バサッ!

蕾はイヌマキの生け垣になだれ込み、歩道の上で気を失ってしまった…。

ポツリ………ポツリ………

無情の雨が少女の体を叩き始める…。




ガチャン!

玄関のドアが勢いよく開き、出てきたのは中條。タバコをくわえ、黒いスーツのポケットに手を突っ込んで、タバコと雨に煙る空を染みったるそうな目で見上げた。

その背後から、裸足のまま敬介が血相を変えて転げ落ちるように駆け寄り、中條の右肘を掴んだ。

そして、すぐさま中條に向かって雨の庭土の上に膝まづいた。

「社長!どうかその子だけは許して下さい!お願いします!必ず蕾を見つけて来ますから!金もお返しします!お願いです!どうか梓は…梓だけは勘弁して下さい!」

中條はタバコを玄関に投げ捨て、黒い革靴の底で揉み消しながら、敬介に掴まれた右肘を左手ではたき、涙声で懇願する敬介をドブネズミでも見るように見下ろして嗜めた。

「佐山君、寝言は寝てから言うものだよ?もう、約束の一日は過ぎた。必ず探すから一日だけ待ってくれと言ったのはあんただ。私は嘘が嫌いでね…。

あの子を渡せないなら妹をと、あれほど釘を刺した筈。

それに、もう既に金は振り込でる。男が一度出した金は引っ込める訳にいかないんだよ。あんたも男なら分かるだろ?

妹はあの子の代わりになれるほどの玉ではないが…。

まあ、ちょっと初物を味見してから、中国かタイへでも売れば幾らかにはなるだろう…」

最後のくだりは、大っぴらに言う事ではないと、若干独り言のように口の中でくぐもった。

敬介は奥歯を噛みしめ、震えながら中條を睨み付けた。

中條の肩越しに、北川に抱き抱えられた梓の顔が覗く。悲しそうな瞳で敬介を見つめていた。これから自分の身に振りかかる不運を理解しているのだろうか…。
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