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口琴
第17章 口琴
…スー…スー…
聖の微かな寝息が蕾の耳を擽り、うっすらと瞼を開いた。
ぼんやりと霞む視界に、凛々しい少年の寝顔が映る。
…良かった…夢じゃなかった…
私…今…聖君のそばにいるんだ…
狭いシングルベッドの中で、寄り添って眠った。
聖の香りの布団…
男臭いと聖は言ったが、聖に包まれているような安心感のあるこの香りが、堪らなく好きだった。
空気が、冷たい…
躰が、温かい…
目の前の聖の寝顔…
こんなに近くで、聖の顔をじっと見たのは初めてだった。
…聖君…睫毛、こんな長かったっけ?
綺麗な顔。
でも、前から思ってたけど、誰かに似てる。
…誰だっけ?…
聖の寝顔に見みとれながら、そっと指先で、聖の長い睫毛の先に触れた。
「んっ…うぅん…」
聖の瞼が、うっすらと開く。
「…あっ…」
蕾は慌てて、布団を目の上まで被って隠れた。
夕べの情事が少し照れ臭くて、顔を見られるのが恥ずかしい。
「…おはよう…」
頭の上から聞こえる、低く掠れた声。
蕾は目だけを布団から少しだけ出して、上目使いに聖を見た。
「…おはよ。…ごめん…起こしちゃった?…」
蕾の方へ横向きになり、肘枕した聖。窓から射す太陽光に片目を瞑り、頭をクシャクシャと掻きながら呟いた。
「…よかった…」
「ん?」
「朝起きたら、お前がいなくなってんじゃねぇかって思ったから…」
「…どうして?…」
「…いや…どうしてって言うか…その…夢だったらどうしようって思って…」
その言葉に、蕾は思わず笑ってしまう。
クスクスッ
「…なんだよ?…そんなに可笑しい?…」
少し不機嫌そうな聖に、蕾は少し頬を染めてニコりと微笑むと、また布団に潜り込んで、聖の胸にギュッと抱きついた。
「…どした?…朝からまたやる?」
「もう!聖君のえっち!」
布団から飛び出して、聖の肩を小さな拳で叩く。
「うっ!痛てっ!」
「あ、ごめん…痛かった?」
心配そうに見つめる蕾を見て、ペロリと舌を出した。
「もう!バカ!」
「わぁ!ごめん。ハハッ!」
「…私も…同じだったから…」
「…ん?…」
「夢じゃなかったって…聖君に逢えたこと…」
「…蕾…」
二人は顔を寄せ合って、口づけた。
「…蕾…どうしよう…」
「ん?」
「…したくなっちゃった…」
「もう!えっち!」