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イカせ屋稼業
第10章 〜番外編〜
「ただいまー…」


門戸のインターホンを押して、
家政婦の戸田さんにそう声をかけた。


「おかえりなさいませ、
直ぐ開きます」
戸田さんは45歳の通いの家政婦だ。

自動で施錠が解かれる。



俺は自宅に入った。


セントバーナードが走って寄ってきた。

「マリ!
ミクル、よしよし」


7匹いるバーナードのうち、メスの2匹の頭を撫でる。




黒い扉を開く。


「あれぇ?
拓矢今帰ったのー?」

大学生の姉がバッグを持ってヒールを履いているところだった。


俺は咄嗟に身構える。
「うん、ただいま」


「あたしサークルの子たちと飲み会だから、
行ってくるね!」

カツカツとヒール音を立てて上の姉が出て行った。


ホッと胸を撫で下ろす。



小学生の時に血液型の遺伝を聞いて、
疑問に思った俺は父さんに訊いてみた。珍しく書斎に居た父さん。

父さんは難しい顔をしたあと母さんにTELをして呼びつけて、
俺に「血が繋がってないんだよ」と打ち明けた。




ちょっとだけ、
思ってた。


姉2人はエキゾチックな顔立ちで、
―もちろん純日本人なんだけど―目が大きくて肌も浅黒い。

気にして「美白しなきゃー」と小学生の頃から美白化粧品を使っていた。


父さんも母さんも白いほうじゃないから、
姉2人はそっくり父さんと母さんを半分ずつ分けたような容姿だ。


(僕だけ似てない…)
小さな頃から思っていて、口には出さなかったけど疑問だった。
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