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イカせ屋稼業
第11章 そのじゅう
(何だよ………
怒らなくってもいいじゃんか。
したくてしたんじゃないんだから)

翔汰は溜め息を吐きながら空になった皿を流しへ置く。


きっちり拓矢のぶんも。
(その辺りが翔汰である)



仕事の準備をするあいだ、ふたりは互いに口もきかない。


ぶっす〜〜〜っとむくれて違う方角を睨みながら、
玄関前にて甲斐を待つ。


バンワゴンが停車した。


『……はよーございます…』
『はようござーます…』



『お?
お前ら、どうした?
痴話喧嘩でもしたか?あっはっは(笑)』

甲斐は朝から元気だ。



車が走り出しても後部座席のふたりはだんまり。



『………おーい。
お前たち?
マジで喧嘩したのか……』甲斐が肩を落とす。


『……別に』
拓矢が口を開いた。



『〔別に〕じゃないだろー。かなり前の有名女優か(苦笑)
しっかりしてくれよ〜。
今日から〔怪我人コスプレ〕撮影なんだからさぁ…
ふたりで絡むシーンしか無いんだから』


『……はい』
今度は翔汰。



甲斐はミラー越しに後部座席を見る。
(やっぱりそうなるか…)

敏腕マネージャーの甲斐には、
カップルとなった翔汰・拓矢の喧嘩くらい想定内だった。

ふたりは普段からあまり喧嘩をしない。
だからこそ、一旦拗れると難しい。


甲斐は、
撮影が始まるまでに何とかしないとなぁと考えた。



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