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第11章 そのじゅう

『うわぁ………
マジか！』


イージーがカメラを調節していると、
甲斐が珍しく大声を出した。


先日と同じSMホテルでの撮影。


メイクさんが拓矢にメイクアップをしており、
翔汰はワイシャツにネクタイでスタンバイしている。

準備中という状況。


『どうしたのぉ？』
イージーがクネクネしながら甲斐に問う。



『行方不明の新人女優、
nineに買収されやがった』


翔汰は『………あっ？！nineって、まさか』
と思い付く。


拓矢の顔が強張った。
『KANAMEの所属事務所？』

甲斐が忌々しげに立ち上がり、
『移籍したとネットに出てるよ。
―――そんな話は全くなかったのに……さては、
脅しか恐喝でもしたな？………』


『………知らないうちに移籍って有り得るんすか？』翔汰が訊くと、
イージーが『有り得ないわよ。
事務所と話をつけたあとじゃないと移籍は成立しないわ。契約違反で違約金も発生するわよ』
と答える。



『じゃあ………
いったい、どうやって？』翔汰が首を傾げた。


『だから、脅しまたは恐喝で女優を無理やりに……
だろうな。
それしか出来ないはずだ』甲斐が溜め息を吐く。
『いつの間にか〔かのうゆえ〕から〔ひいらぎゆえ〕に改名されてるよ。
これは問題だ。――翔汰、KANAMEって男優からどう言われた？』