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イカせ屋稼業
第11章 そのじゅう
『…………〔お前と拓矢を潰す〕………』




『だよな?
良いか、気をつけておけ。nineの奴らは本気だ』
甲斐が厳しい声を出す。
『この業界にもルールがあるんだよ。事務所移籍はよくあることだし、双方納得のうえでの成立なら仕方ない。報酬がより良い事務所に移籍したい気持ちはタレントなら当然だしな。
だが、奴らその〔ルール〕を完全無視だ。
nineなんて売上がほとんど無い。
報酬だって無いはずなんだ』



拓矢はゴクリと唾を飲み込んだ。




『ちょっとお〜〜〜。
撮影前にジメジメしないでよぉ!
いい画(え)が撮れなくなるじゃないのォ』
イージーがクネクネしつつ明るい声で諭した。


『スンマセン(苦笑)
じゃ、俺とメイクさんは待機します〜』
と甲斐はメイクさんを連れて外に出ていく。



『………大変なことになってきたわねェ』
イージーは神妙な声で呟く。


『そうなの?』
翔汰はイマイチ深刻な感じを捉えられず、
分からないという表情。


イージーはギラリと目を光らせた。
『深刻なことなのよ。
――あんたたちは事務所〔ミントリア〕がしっかりしてるし、
ふたりとも幸運すぎるほど恵まれた環境だわ。
あんたたちみたいなのは稀なのよ。
この業界、喰うか喰われるかよ?それは分かってると思うけど、
今まで移籍に関してルールをすっ飛ばした事務所なんて無かったわ。
nineてトコは異常だわ。
業界自体にケンカを売ってるように見える……』


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