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イカせ屋稼業
第1章 そのいち
拓矢はしれっと翔汰を抱きよせた。


肩を抱く。


カメラスタッフが『自然にねー!』
と声を掛ける。


(お前、慣れてるわけ?)
(んな訳ないだろう。
仕事だからだよ)

ヒソヒソ声で話しながら、拓矢と翔汰は〔恋人〕を装う。
シャッター音がカシャカシャ響く。


拓矢はヒョイッと翔汰の背後に回り、
女性にそうするようにぎゅうっと抱きかかえる。


(うっ…………)
翔汰はまだカラダが慣れず、
強張る。


カメラスタッフがすかさず、
『翔汰くん、リラックスしてー』と注意する。




拓矢は翔汰の強張りを感じ、
ふーっと耳に息をかけた。

(ひぃっ……)
ゾクリと身震いをし、
翔汰は拓矢を睨む。

(お前なにすんだよ)


(リラックスしようよ、
仕事だよ?)
落ち着いた拓矢の声音。

さらには拓矢は翔汰の左耳を舐める。

『あっ…………』
ピクッと感じて瞳を閉じた。

『お、
良いね〜♪♪
その調子』カメラスタッフがバシャバシャとシャッターを切る。


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