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君をこんなに愛してる
第9章 白い世界の中で
二冊目のアルバムには、花の写真が入っていた。
「……」
一冊目を見てもそうだったけれど、このアルバムには風景の写真しかない。そこに人間は登場していなかった。
“ …この写真、なんだろ、見覚えがあるな ”
花壇の中で咲いた花。
この花壇は、貴峰家の庭園だ。
…そして思い出した。
「これわたしが撮った写真だ…!」
いつだったろう。
庭に咲いた花…世話をするわたしに、カメラを持った旦那様がやって来て、写真をいくつかお願いされた。
本格的なカメラなんて持っていない。
スマホのカメラ機能しか知らないわたしは、旦那様の期待に応えようとあれこれ試したのを覚えている。
それぞれの花の魅力を伝えたくて…
その日、仕事が終わってからもずっとカメラ片手に研究していた。
次の朝にカメラを返すと、「家の庭の様子を知りたがっている人がいるから」と旦那様は言っていた。
それを伝えるために、この写真を贈るのだと。
“ あの時の写真はこの部屋に届いていたんだ ”
外に出たことのない彼のもとへ、届けられていたのね…。