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第4章 第二話【花影】－其の壱－

「おとっつぁんはそれで良くても、それじゃあ、私の気が済まないよ」
　お彩は改めて父に真摯な眼を向けた。
「おとっつぁん、今まで本当にごめんなさい」
　深々と頭(こうべ)を垂れると、一瞬、伊八が固まった。
　短い沈黙が降り、伊八の整った貌がまた、歪んだ。
「何を他人行儀なことしやがるんでえ。そんな風に謝られたら、父ちゃんは何て言ったら良いか判らないじゃねえか」
　伊八の声が小刻みに震えている。ああ、父は泣いているのだと、お彩は思った。
「さあ、面倒な話はもうここまでだ。さっさと上がんな」
　伊八がわざと明るい声音で言う。お彩はそれでもなお頑なに首を降り続けた。そんな娘を見て、伊八は苦笑いを刻んだ。