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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第32章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の壱
 お彩は江戸でも指折りの大店呉服太物問屋京屋に嫁いだが、新婚わずか四か月で京屋を出て、良人市兵衛とは絶縁状態になっている。人別帳には、お彩はまだ京屋の主市兵衛の女房ということにはなっているけれど、それはあくまでも形式上だけのことであり、既に二人は離縁したも同然であった。
 お彩は京屋を出た際、既に市兵衛の子を宿しており、かつてから、お彩に想いを寄せていた伊勢次の許に身を寄せた。伊勢次はそれまでにもお彩に何度も求婚していたが、その度に断られていた。それでも、伊勢次はお彩の良き友達であり、兄のように何でも相談できる頼もしい存在であり続けてきた。
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