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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第32章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の壱
お彩は、喜六郎の言葉に胸が熱くなった。少なくとも、喜六郎だけは、世間のどんな言葉にも惑わされず、自分と伊勢次を信じてくれたのだ。
一旦言葉を切った喜六郎は憂い顔でお彩を見つめた。
―京屋では、今でもお前は病気のために温泉地で療養中ということになってるらしいぜ。だが、世間様をそういつまでも騙しおおせるとは思えねえ。一体、何があったっていうんだ、お彩ちゃん。俺が知る限り、お前は、伊勢さんと道ならぬ恋に落ちて駆け落ちなんぞするような娘じゃねえ。京屋を出たのも伊勢さんと江戸を離れたのもよほどの理由があると察してるんだが、どうだい、本当のことを教えちゃくれねえか。
一旦言葉を切った喜六郎は憂い顔でお彩を見つめた。
―京屋では、今でもお前は病気のために温泉地で療養中ということになってるらしいぜ。だが、世間様をそういつまでも騙しおおせるとは思えねえ。一体、何があったっていうんだ、お彩ちゃん。俺が知る限り、お前は、伊勢さんと道ならぬ恋に落ちて駆け落ちなんぞするような娘じゃねえ。京屋を出たのも伊勢さんと江戸を離れたのもよほどの理由があると察してるんだが、どうだい、本当のことを教えちゃくれねえか。