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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第32章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の壱
「馬鹿野郎」
烈しい怒声に一喝され、お彩はビクリと身を震わせた。
「お前は、十日前にこの店に来た日に俺が言ったことをもう忘れたのか。確かに、お美杷坊は、俺の血続きの孫じゃねえ。だけど、俺はお前を手前の娘として、この店を譲りたいと言ったんだぜ。お前が娘なら、お美杷坊は孫だ。これだけはよおく憶えていてくんな。お彩ちゃん、俺はこれから先、お前もお美杷坊のことも絶対に赤の他人だとは思わねえ。叱るときは己れの娘や孫にするのと同じように容赦なく叱る。良いな?」
お彩の眼に涙が滲んだ。喜六郎の声がいつしか亡き父伊八の声に重なって聞こえていた。
烈しい怒声に一喝され、お彩はビクリと身を震わせた。
「お前は、十日前にこの店に来た日に俺が言ったことをもう忘れたのか。確かに、お美杷坊は、俺の血続きの孫じゃねえ。だけど、俺はお前を手前の娘として、この店を譲りたいと言ったんだぜ。お前が娘なら、お美杷坊は孫だ。これだけはよおく憶えていてくんな。お彩ちゃん、俺はこれから先、お前もお美杷坊のことも絶対に赤の他人だとは思わねえ。叱るときは己れの娘や孫にするのと同じように容赦なく叱る。良いな?」
お彩の眼に涙が滲んだ。喜六郎の声がいつしか亡き父伊八の声に重なって聞こえていた。