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第33章 第十三話　【花残り月の再会～霞桜～】　其の弐

　お彩はハッとした。市兵衛のたくましい胸を叩いていた我が手を茫然と見つめた。
―やはり、このひとの心は凍っているのかもしれない。
　そう思えてならない。が、よくよく考えてみれば、市兵衛をここまで追い込んだのもまた、お彩自身なのだ。一年前、伊勢次と共に暮らしていたお彩を迎えにきた時、市兵衛は確かに言った。
―私はずっと以前、自分の心を殺したんだよ。
　心を殺せば、何も感じなくなる。大切な人に裏切られても、心の痛みを感じなくても良いからと。
　その言葉を聞いた時、何と哀しいことだろうと感じたけれど、一度めに市兵衛の心を殺したのが最初の女房お市なら、二度めに殺したのは他ならぬお彩自身だ。