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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第33章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の弐
たとえ直接に手を下さずとも、お彩はあの日、市兵衛の心を確実に殺した。伊勢次はお彩が結ばれてもなお心を市兵衛に残していることを知り、絶望して死んだ。心ならずも、お彩は二人の男の心を殺したことになるー。
それは、何とも罪深いことであった。一体、どんな業を背負っているからといって、こんな運命を辿らねばならぬのだろう。いや、すべては優柔不断で、最後まで己れの心をきっぱりと決められなかった我が身の愚かさ、弱さがもたらしたもの。
いかなる言い逃れもできない。
だが、今のお彩は過去の自らの罪に、悔恨にどっぷりと浸かっていることはできない身であった。感傷に浸るのは、伊勢次を失った哀しみから這い出た時、止めると誓ったのだ。
それは、何とも罪深いことであった。一体、どんな業を背負っているからといって、こんな運命を辿らねばならぬのだろう。いや、すべては優柔不断で、最後まで己れの心をきっぱりと決められなかった我が身の愚かさ、弱さがもたらしたもの。
いかなる言い逃れもできない。
だが、今のお彩は過去の自らの罪に、悔恨にどっぷりと浸かっていることはできない身であった。感傷に浸るのは、伊勢次を失った哀しみから這い出た時、止めると誓ったのだ。