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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第33章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の弐
 その時、お彩はまだ京屋市兵衛の本当の怖ろしさを知らなかったのだ。市兵衛が「氷の男」と同業者から畏怖されるのは、何もただ冷徹なやり手の商人ゆえというだけではなかった。欲しい物を手に入れるためには手段を選ばない―、それが「氷の京屋」と呼ばれた市兵衛のやり方であった。氷という呼ばれ様には、情け容赦もないといった意味合いが込められていた。そのことを、お彩は後に思い知らされることになる。
 市兵衛は静かな瞳でお彩を見つめている。その奥には酷薄ともいえる光が潜んでいた。
 が、次には顔を引き締め、端整な面に緊張を漲らせた。
「とにかく、今は真っ先に考えなきゃあならねえことがある。お美杷の身の安全が最優先だ」
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