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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第34章 第十三話 【花待ち月の再会】 其の参 
 片隅にある文机は紫檀で、すべて大店らしい豪奢な調度品で占められていた。
 どうやら、河津屋仁左衛門の暮らしぶりは、京屋市兵衛よりも派手らしい。その点、市兵衛はあまり華美贅沢を好まぬ質と見え、京屋で暮らしたわずかな期間中、お彩はとりたてて、市兵衛が派手好きだと感じたことはなかった。
 もちろん、裏店住まいの身であったお彩から考えれば、桁はずれというか想像を超えた別世界の生活ではあったけれど―。
 お彩が何とはなしに部屋の美々しい調度品を見ていると、襖が開いた。これも名のある絵師が描いたらしい、一対の鷺が水辺で羽を休めている図柄である。墨一色で描かれているのが、かえって鷺の繊細さを上手く出していて、見事なものであった。
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