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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第35章 第十四話 【雪待ち月の祈り】
安五郎が苦笑いを刻んだ。
「ですが、潰れちまっちゃあ、どうにもなりませんや。こっちも旦那が病がちで代替わりして、若旦那が主にやりなさるようになってからは、見る間に客が減っちまいましてね。若旦那ご自身は大人しい真面目なお人ですが、生憎と板前として才覚には恵まれなかったようでした。【三隅】は味が落ちたという評判がひろがって、どうにもならなくなっちまったんでさ」
「そういうことか。ま、はばかりながら、どんな小店でも料理屋は味が生命だからな。うちのようなしがねえ飯屋だとて、味の善し悪しがお客の出入りに繋がるわけだから、ましてや、【三隅】ほどの料亭となりゃあ、味には煩せえ大店の旦那衆が顧客に大勢いたろうしな。俺もあそこの味が落ちた、まずくなったという声は何度か耳にしたさ」
「ですが、潰れちまっちゃあ、どうにもなりませんや。こっちも旦那が病がちで代替わりして、若旦那が主にやりなさるようになってからは、見る間に客が減っちまいましてね。若旦那ご自身は大人しい真面目なお人ですが、生憎と板前として才覚には恵まれなかったようでした。【三隅】は味が落ちたという評判がひろがって、どうにもならなくなっちまったんでさ」
「そういうことか。ま、はばかりながら、どんな小店でも料理屋は味が生命だからな。うちのようなしがねえ飯屋だとて、味の善し悪しがお客の出入りに繋がるわけだから、ましてや、【三隅】ほどの料亭となりゃあ、味には煩せえ大店の旦那衆が顧客に大勢いたろうしな。俺もあそこの味が落ちた、まずくなったという声は何度か耳にしたさ」