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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第35章 第十四話 【雪待ち月の祈り】
 ただ、帰り際の安五郎に念を押すのも忘れなかった。
「おい、二、三日中には必ず顔を出せよ」
 かつては同じ釜の飯を食べ、実の弟のように叱咤した安五郎である。こうして、わざわざ頼りにして訪ねてきた心中を思えば放ってはおけないのが喜六郎の人柄であった。
「判りました」
 安五郎は笑顔で会釈をすると、帰っていった。それからほどなくして、お彩がお美杷を連れて帰ってきた。
 随明寺まで詣でて、広い境内を歩いていたのだ。随明寺はここからも近い黄檗宗の名刹である。山内の墓地に、お彩の両親である伊八やお絹も眠っているため、しばしば、墓参りに出かけている。
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