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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第36章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の弐
 階段を下りきった場所に、安五郎が案じ顔で立っている。
「旦那さんがお願いしますとおっしゃってます」
 お彩が明るい声音で言うと、安五郎は頷いた。
「及ばずながら、力を尽くさせて貰います」
 一刻ばかりが過ぎ、店を埋め尽くした客は数人になっていた。昼飯の時間が過ぎたのだ。
 「花がすみ」の客はお店者とか職人、人足といった連中が大半を占めている。昼飯を終えた彼等はまた、各々の仕事場に戻ってゆくのだ。
 忙しない時間が瞬く間に過ぎ、お彩は安堵していた。板場にこもりきりだった安五郎の顔にもホッとした表情が浮かんでいる。
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