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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第36章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の弐
 狭い店内には小机が幾つかと腰掛け代わりの空樽が数個ずつ、机を取り囲むように無造作に置かれている。その机の一つに、見憶えのある男が座っていた。
 色白の細面に、釣り上がり気味の細い双眸は優男といえなくもない。女によっては、このような男を男前という者もいるのだろうが、お彩は京屋にいた頃、いつも狐のようだと思っていた。何より、釣った細い眼(まなこ)は、いかにもこの男の小狡さを表しているようだ。
 お彩にとっては、何かと辛く当たることも多かった京屋の手代頭泰助であった。泰助に限らず、京屋の奉公人たちは上は古参の大番頭から下は年端のゆかぬ丁稚までが皆、お彩に対して似た態度を取った。
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