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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第36章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の弐
「―」
つまり、自分の言葉はすべて市兵衛の意思だと思えと、泰助は言いたいのだろう。
黙りこんだお彩に、泰助がここぞとばかりに言った。
「嘘が真である中に、大人しく京屋にお戻りになられてはいかがですか? 旦那さまは、いつまでもお内儀さんが強情を張っておいでなら、こちらにも考えがあると申されておいでにございます。奉公人の分際の私めがこんなことを言っちゃあ畏れ多いが、うちの旦那さまは心底怖いお方にございますよ。私は子どもの時分から旦那さまをお傍でずっと拝見しておりますものでね、旦那さまが本気でお怒りになられたら、たとえお相手がお内儀さんであろうと、徹底的に打ちのめされちまうまで叩かれるでしょう。そうならない中に、大人しく京屋にお戻りなさいまし。悪いことは申しません」
つまり、自分の言葉はすべて市兵衛の意思だと思えと、泰助は言いたいのだろう。
黙りこんだお彩に、泰助がここぞとばかりに言った。
「嘘が真である中に、大人しく京屋にお戻りになられてはいかがですか? 旦那さまは、いつまでもお内儀さんが強情を張っておいでなら、こちらにも考えがあると申されておいでにございます。奉公人の分際の私めがこんなことを言っちゃあ畏れ多いが、うちの旦那さまは心底怖いお方にございますよ。私は子どもの時分から旦那さまをお傍でずっと拝見しておりますものでね、旦那さまが本気でお怒りになられたら、たとえお相手がお内儀さんであろうと、徹底的に打ちのめされちまうまで叩かれるでしょう。そうならない中に、大人しく京屋にお戻りなさいまし。悪いことは申しません」