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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第37章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の参
 小さな朱塗りの鳥居をくぐり百度石を配した先にひそやかに佇むのは絵馬堂であり、ここは人気もないことから、男女がひそやかな逢い引きの場所として使うことが多い。絵馬堂を横眼に見て通り過ぎたその奥が広い境内の最奥部に当たり、浄徳大和尚を祀った奥ノ院、その脇に「大池(おおいけ)」と称される巨大な池があった。
 花見の名所として知られるのはこの界隈で、池のほとりに数本の桜の大樹が林立している。桜花が一斉に咲いた光景は、まさに圧巻としか言いようがなく、遠方から見ても、その辺りが薄桃色の靄か霧に包まれているように見えるほどだ。この時季には、秋の大祭のときにも引けを取らないほどの花見客で溢れ返る。
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