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第37章 第十四話　【雪待ち月の祈り】　其の参

　桜の樹が続いた先に、これまた楓の樹が幾本が植わっていて、秋には桜に代わって人々の眼を愉しませてくれる。だが、春とは異なり、紅葉狩りに訪れる人はまばらで、かえって存分に艶(あで)やかな紅葉を愉しむことができる。喜六郎は今の時季にはあまり参詣客がいないことを知っていて、わざと二人を紅葉見物に出したのだ。
　美しい紅葉を眺めながら二人だけでゆるりと時間を過ごせば、自ずと二人の間にも甘やかな雰囲気が芽生えるのではと目論んだに違いない。いかにも喜六郎らしい配慮であった。確かに、今のお彩と安五郎は祝言云々という前に、互いに知り合うことが大切であった。
そのためには、二人きりで話をすることがまず必要には違いない。