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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第37章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の参
「安五郎さんの料理は見た目はとてもきれいです。でも―、こんなことを申し上げると、気を悪くなさるのは判ってるんですが、何か違うっていうか足りないような気がするんです」
「もう少し詳しく判り易く言っちゃ貰えませんか」
「美しいけれど、匂いのない花のような―」
 言ってしまってから、お彩は我に返った。
「済みません、私のような駆け出しの人間が安五郎さんのような熟練した方にこんな生意気なことを言っちまって。ご無礼をお許し下さい」
 いくら安五郎が言い出したことだはといえ、相手は板前として二十五年活躍してきた大先輩で、所詮、お彩なぞ足下にも及ばない。それを生意気にも何てことを言ったのだろうと、我ながら悔やまれた。
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