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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第38章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の四 
 落ち着くのだと、必死で我が身に言い聞かせた。自らを落ち着かせようと、深い息を吸い、吐き出す。深呼吸を幾度か繰り返した後、閉じていた瞳をゆっくりと開いた。
 再び市兵衛を見つめたときのお彩の瞳には、既に微塵の迷いもなかった。
「お美杷を京屋さんにお返しいたします。ただし、私は娘と一緒には参りません」
 刹那、市兵衛の切れ長の双眸がお彩を射るように見開かれた。その瞳には紛うことない驚愕の色があった。ひと息に言い切ったお彩に、市兵衛は問うた。
「やはり、あの子は私の子なのか?」
 その問いに、お彩は応えなかった。
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