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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第39章 第十五話 【静かなる月】 其の壱
伊勢次と駆け落ちも同然に逃げるように江戸を離れた時、お彩は喜六郎に挨拶もせずにいってしまった。
それなのに、喜六郎は嫌な顔もせずにお彩を迎えてくれた―。むろん愕きはしたけれど、深い詮索もせずに「花がすみ」に再び仲居として雇い入れてくれた。
今、お彩はかつて伊勢次と共に暮らした近くの長屋に住み、そこから「花がすみ」に通っている。仲居としての仕事の傍ら、一人前の板前となるべく喜六郎から日々、厳しい指南を受けている。
指導を受ける時間は空いている刻(とき)、例えば、昼飯刻、夕飯刻から店を閉めるまでの最も忙しい時分は除いた時間ということになる。
それなのに、喜六郎は嫌な顔もせずにお彩を迎えてくれた―。むろん愕きはしたけれど、深い詮索もせずに「花がすみ」に再び仲居として雇い入れてくれた。
今、お彩はかつて伊勢次と共に暮らした近くの長屋に住み、そこから「花がすみ」に通っている。仲居としての仕事の傍ら、一人前の板前となるべく喜六郎から日々、厳しい指南を受けている。
指導を受ける時間は空いている刻(とき)、例えば、昼飯刻、夕飯刻から店を閉めるまでの最も忙しい時分は除いた時間ということになる。