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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第39章 第十五話 【静かなる月】 其の壱
 お彩は、これにもかぶりを振った。
「旦那さん、そのことはもうおっしゃらないで下さい。元々、お美杷だけを京屋さんに託すと言い出したのは、この私なんですから」
「だが、あの旦那がお前さんを取り戻すために、あんな無茶を言ってこなけりゃア、今頃、お前とお美杷ちゃんが離れ離れになることはなかったんだぜ」
 喜六郎は、それでもまだ無念そうにぼやいた。
 お彩は哀しげに微笑んで、喜六郎を見つめた。
「お前はまだあの旦那のことを―」
 喜六郎は言いかけて、口をつぐんだ。それから先は言ったとしても辛くなるだけだと判断したのだろう。
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