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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第40章 第十五話 【静かなる月】 其の弐
「旦那さん、ちょっとお話があるんですけど、大丈夫ですか」
お彩が言うと、「入りな」とまた、すぐ返事が返ってくる。お彩は静かに障子を開けた。
喜六郎は夜具の上に身を起こしている。
お彩は枕辺にあった着物を肩からかけてやった。
「どうした、お前の方が病人みてえなしけた顔色してるぜ」
喜六郎が揶揄するように言うのへ、お彩は真顔で言った。
「本当のことを教えて下さい。旦那さん、もしかして、この店を手放さなきゃならないことになっちまったんじゃないですか」
喜六郎の口がへの字に結ばれた。店のこと、料理のこととなると、まるで人が変わるほど頑なになる喜六郎である。普段の喜六郎は温厚で優しい人なのだが。
お彩が言うと、「入りな」とまた、すぐ返事が返ってくる。お彩は静かに障子を開けた。
喜六郎は夜具の上に身を起こしている。
お彩は枕辺にあった着物を肩からかけてやった。
「どうした、お前の方が病人みてえなしけた顔色してるぜ」
喜六郎が揶揄するように言うのへ、お彩は真顔で言った。
「本当のことを教えて下さい。旦那さん、もしかして、この店を手放さなきゃならないことになっちまったんじゃないですか」
喜六郎の口がへの字に結ばれた。店のこと、料理のこととなると、まるで人が変わるほど頑なになる喜六郎である。普段の喜六郎は温厚で優しい人なのだが。