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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第40章 第十五話 【静かなる月】 其の弐
お彩は、おとみに礼を言うと、「花がすみ」の方に歩き始めた。しかし、まるで雲の上を歩いているように、足許がふわふわと覚束ない。自分の気持ちと身体がバラバラに動いているようだった。
はや夏を思わせる眩しい陽光も今のお彩にはかえって、鬱陶しいものに思えてならなかった。夕方には再び店を開けるつもりではあったが、店の方はとりあえず「本日休みます」の札を表に下げている。幸い、次の夕飯刻のかき入れ刻までにはまだ間があった。
お彩は二階へと上がり、喜六郎の部屋の前に立った。
「旦那さん、起きていなさいますか」
遠慮がちに声をかけると、ほどなく応(いら)えがあった。
はや夏を思わせる眩しい陽光も今のお彩にはかえって、鬱陶しいものに思えてならなかった。夕方には再び店を開けるつもりではあったが、店の方はとりあえず「本日休みます」の札を表に下げている。幸い、次の夕飯刻のかき入れ刻までにはまだ間があった。
お彩は二階へと上がり、喜六郎の部屋の前に立った。
「旦那さん、起きていなさいますか」
遠慮がちに声をかけると、ほどなく応(いら)えがあった。