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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第40章 第十五話 【静かなる月】 其の弐
「端からそちらには承服しかねるお願いだと判って、こうして今度は私がお伺いしております。大体、責任を取るべきなのは、三十両を借りた張本人の富久三さんであって、うちの旦那さんはむしろ被害者なんですよ?」
 肥前屋が馬鹿にしたように鼻で嗤った。
「そんなことは百も承知だよ。だが、喜六郎さんだって五十を過ぎた良い歳をした爺さんだ。保証人たァ、そういうもんだと初っぱなから心得ていなすったんじゃねえのかい? その上で富久三のようなどうしょうもねえ奴の保証人になったってえいうんだから、責めは手前で負わなけりゃア仕方あるめえ。な、別嬪さん、そんなことを一々、言ってたら、この商売なんざァ、できっこねえんだよ。金を貸すのが商売なら、返して貰うのもまた、商売。それを借りるだけ借りて、踏み倒されちまっちゃア、俺っちの方が大損をするわけだよ」
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