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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第41章 第十五話 【静かなる月】 其の参
 お彩はその日、三十両と引きかえに「三國屋」の抱える女郎となった―。楼主の浅助は、まるで恵比寿さまをそのまま人にしたような福々しい容姿(なり)をしていた。が、流石に亡八(ぼうはち)(遊女を売り買いする女郎屋の主人は人しての八つの徳を忘れ果てると云われるところから、こう呼ばれる)と呼ばれるだけあり、人― 殊に女を見る眼は確かであった。
 浅助はお彩が上玉と見込んだ上で、破格の三十両という買値で引き取ったのだ。そして、その三十両は女衒の兼平太が「花がすみ」に届けてくれることになった。「三國屋」は半籬で、惣籬(大籬)のような大見世ではないが、それに準ずる中規模どころの格を保つ見世で、抱える女郎もそれなりの売れっ妓(こ)が多い。
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