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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第41章 第十五話 【静かなる月】 其の参
「それは、どういうことだ?」
 お彩の眼に涙が溢れた。
「伊勢次さんと一緒に暮らすようになっても、私はどうしても、あなたを忘れることができなかった―、いっそのこと、あなたを忘れられたら良かった、嫌いになれれば良かった。そうしたら、伊勢次さんは死ぬこともなかったんだわ。あの男(ひと)は、あんなところであんな風に一人ぼっちで死んでしまうような人じゃなかったはずなのよ。私さえあの男(ひと)の許に行かなければ、もっと違う、幸せな人生を生きるはずだったのに」
 お彩は潤んだ眼で市兵衛を見た。
「私が悪いのよ。私が伊勢次さんを殺したの」
「だが、伊勢次は一人ぼっちじゃなかったろう? ずっとお前があいつの傍にいたじゃねえか」
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