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第41章 第十五話　【静かなる月】　其の参

好きだから、身を退く、別れなきゃならないってこともこの世の中には、いっぱいあるはずよ。私は今でも陽太さんを好きよ。七年前、初めてあなたと出逢ったあの日から今も、私の気持ちは少しも変わっちゃいない。でも、あなたと私を取り巻く環境はあまりに変わりすぎてしまった―、いいえ、変わったんじゃなくて、端から私がその違いを知らなかっただけなんでしょうね。それでも、私はあなたと出逢えて、良かった。色々なことがありすぎるほどあったけど、あなたという男(ひと)にめぐり逢えて、恋して、良かったと思うの」
　市兵衛が呟いた。
「お前の中で、私はもう完全に想い出の中の人間になっちまったんだな」
　その呟きには、やるせないほどの寂寥感がこもっている。