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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第41章 第十五話 【静かなる月】 其の参
人は誰でも一生かけて、その人にしか咲かせることのできない花を咲かせるんだって。色々な花があると思うけれど、どのお花もその人が一生懸命頑張って咲かせた、その人だけの生きた証だって」
「その人だけの生きた証、か」
 市兵衛の声が、瞳が揺れた。
 端整な顔をつうっとひとすじの涙がつたい落ちる。
 お彩はその市兵衛の頭を両手で包み込むようにして、そっと胸に抱きしめた。その抱擁は、男女のというよりは、むしろ、姉が弟に、母が息子に対するような慈しみに満ちたものであった。
「一つだけ訊くが、お前があの小さな店のために、こうまでする必要があったのか?」
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