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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第41章 第十五話 【静かなる月】 其の参
 市兵衛が眼を見開いて、お彩を見つめた。
「そう、人は誰でも心に一つだけ、花を咲かせることができるの。陽太さんには陽太さんだけの花、私には私だけの花」
 お彩が頷くと、市兵衛が眩しげな眼をお彩に向けた。
「お絹さんと同じことを言うんだな」
―一生かかっても良い、心にたった一つだけの花を精一杯咲かせるんだよ。
 それがお彩の亡き母お絹の口癖であり、お絹は市兵衛の初恋の女でもあった。
「そうね、私は物心つく前から、いつもおっかさんにそう言われて育ってきたから、これが私の生きる道しるべになっていたかもしれない。だけど、私、近頃になって、本当にそのとおりだと思うんです。
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