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第42章 第十五話　【静かなる月】　其の四

「思ってもみないお話で」
　お彩はそれだけ応えるのが精一杯だった。「まァ、これも何かの縁だろう。世の中には流れに思い切って身を委ねた方が良いってこともままあるもんだ。それじゃあ、この話は進めさせて貰うよ」
　浅助の口調には有無を言わせぬ響きがある。お彩は両手をつかえて、頭を垂れ、消え入りそうな声で礼を述べた。
「京屋の旦那からは身請け料の他に数回分のお代も頂いてる。普通なら、身請け話が決まった後も廓を出てゆくまでは客は取るものなんだが、特に京屋の旦那さまからお前に他の客は取らせねえでくれと言われてるんで、もう他の客の相手はしなくても良い」