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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第42章 第十五話 【静かなる月】 其の四
 彼にしては珍しく優しげに笑みを返す。滅多と咲かない花がふわりと蕾を開いたような―、それは、特別の余韻をお彩の胸に残した。
 そのときの市兵衛の笑顔が長くお彩の瞼に残像となって残った。その笑顔は、後になっても、事ある毎にお彩の眼裏に生き生きと蘇った。
 降るほどの星が、きれいな夜だった。
 菫色の宵の空に、清らかな半月が静かな光を投げかける春の日のことである。
  
(第十五話 【静かなる月】了  )



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