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第43章 第十六話　【睡蓮】　壱

　淋しさと空しさを忘れるために商いに没頭してみても、お彩の面影が消えることはない。ただ、お彩との間の一粒種お美杷と過ごすわずかな時間だけが唯一の慰めであった。市兵衛はどんなに多忙な日でも、一日一度は必ず愛娘の顔を見に奥に足を運ぶ。お彩にどことはなしに似たお美杷の愛らしい笑顔を見る度に、お彩の花のような微笑が眼裏をよぎった。
お美杷は今、一歳九ヶ月、愛らしい盛りだ。